01
バグ報告の目的は「正解を書くこと」ではない
バグ報告の目的は、発見者が原因を断定することでも、用意された見本を再現することでもありません。開発者やQA担当者が、同じ現象を確認し、影響範囲や原因の調査を始められるように情報を引き渡すことです。
確認できた事実、仕様上の期待、まだ確認していないことを混ぜずに書く。
実際のID・時刻・端末情報はログ調査に役立ちます。ただし、すべての項目に具体値を書けばよいわけではありません。再現条件として必要な値と、単にその試行で使っただけの値を区別します。
02
まず押さえたい、バグ報告の8項目
プロジェクトによって項目名は異なりますが、次の情報が揃うと読み手は状況をつかみやすくなります。すべてを長く書く必要はありません。
題名
どの機能で、何をすると、何が起きるかを一文にします。「動かない」「表示がおかしい」だけでは対象を特定できません。
詳細
利用者への影響や発見した経緯を補足します。題名の言い換えだけで終わらせないことが大切です。
前提条件・環境
端末、OS、アプリのバージョン、アカウント状態など、再現性に影響する条件を書きます。未確認の環境は「未確認」と明示します。
操作手順
現象に到達する操作を、実行順に書きます。通常の業務や検証で共有されている操作まで、毎回細分化する必要はありません。
仕様根拠
期待結果の根拠になる仕様書、デザイン、既存動作などを示します。根拠が確認できない場合は推測で断定しません。
期待結果
本来どうなるべきかを、観測した結果とは分けて書きます。可能なら仕様根拠と対応させます。
実際の動作
画面、ログ、データなどで確認できたことを書きます。原因の推測は事実と分離します。
再現性・証跡
試行回数と発生回数を「5回中2回」のように記録し、現象が分かる動画・ログ・スクリーンショットを添付します。
03
具体例:プッシュ通知から別のお知らせが開く
次は、スマートフォンアプリで確認した現象を整理した記載例です。IDはログとの突合に使えるため記載していますが、この形式だけが正解という意味ではありません。
バグ #1024
プッシュ通知から開くと、1つ前のお知らせが表示されることがある
wataru nakayama が 2026/08/12 10:54 に追加。初版
説明
詳細
お知らせID「NEWS-102」のプッシュ通知をタップすると、前回受信した「NEWS-101」の内容が表示されることがある。
前提条件
検証用のお知らせNEWS-101、NEWS-102が登録されていること。
操作手順
- NEWS-101のプッシュ通知を送信し、端末で開く
- NEWS-102のプッシュ通知を送信する
- 端末に届いたNEWS-102の通知を開く
仕様根拠
通知タップ時は、通知に設定されたお知らせIDに対応する詳細を表示する。
期待結果
NEWS-102のお知らせ内容が表示される。
実際の動作
NEWS-101のお知らせ内容が表示されることがある。
備考
アプリ内のお知らせ一覧からNEWS-102を選択した場合は正常。Android端末および最新版アプリでは未確認。
添付エビデンス
- notification-payload
- notification-video
- navigation-log
この記載から分かること
- 通知そのものと、表示された内容の対応関係を追える
- アプリ内一覧からの遷移は正常で、通知経由に範囲を絞れる
- Androidと最新版アプリは未確認であり、影響範囲を断定していない
04
バグ報告で起きやすい4つの失敗
曖昧な言葉だけで済ませる
「ときどき」「おかしい」ではなく、回数や目に見えた変化を記録します。
原因を事実のように書く
「キャッシュが原因」と断定せず、観測事実と調査上の仮説を分けます。
見本をそのまま写す
見本は書き方の一例です。自分が確認した条件や周辺確認を優先します。
未確認を隠す
確認していないOSやバージョンは、空欄ではなく「未確認」と書く方が誤解を防げます。
05
提出前のチェックリスト
- 題名だけで、対象・操作・現象の概要が分かる
- 別の担当者が同じ条件を用意できる
- 期待結果と実際の動作が混ざっていない
- 確認した事実と原因の推測を区別している
- 再現回数と未確認の範囲を明記している
- 添付した証跡のどこを見ればよいか分かる